時短勤務中の残業は違法?
何時間から残業になる?残業代と企業の対応を解説

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#残業

2026年07月17日

 時短勤務中の従業員に残業をさせてもよいのか、何時間から残業となり、割増賃金が発生するのか、判断に迷う企業担当者も多いのではないでしょうか。

 結論からいうと、時短勤務中の残業自体が直ちに違法になるわけではありません。ただし、短縮後の所定労働時間を超えた分には賃金の支払いが必要です。さらに、原則として1日8時間・週40時間を超えると法定時間外労働となり、25%以上の割増賃金が発生します。

 たとえば、所定労働時間が1日6時間の場合、6時間を超えた時点から所定外労働になりますが、8時間までは法律上の割増賃金が必ず発生するわけではありません。また、従業員から残業免除を請求されている場合は、原則として所定労働時間を超えて働かせることができません。

 本記事では、時短勤務中の残業が違法になるケース、何時間から残業になるのか、残業代の計算方法、残業免除のルール、企業が行うべき勤怠管理についてわかりやすく解説します。

1. 【結論】時短勤務中の残業は違法ではない

 時短勤務中の従業員に残業をさせること自体は、直ちに違法になるわけではありません。時短勤務は所定労働時間を短縮する制度であり、残業を一律に禁止する制度ではないためです。

 ただし、次の3つの条件に該当する場合、残業命令が違法となったり、賃金の未払いが発生したりするおそれがあります。

注意すべき条件 内容
残業免除が適用されている 原則として所定労働時間を超えて働かせられない
36協定を締結していない 36協定なしで1日8時間・週40時間を超えて働かせると違法
残業代の計算を誤っている 所定労働時間を超えた分の賃金未払いは違法

1-1. 時短勤務中の残業自体は禁止されていない

 時短勤務者であっても、残業免除が適用されておらず、労働基準法や36協定の範囲内であれば、会社が残業を命じること自体は可能です。

 ただし、時短勤務は育児・介護と仕事の両立を支援するための制度です。恒常的に残業が発生している状態は制度の趣旨に反するため、業務量の調整や労働時間の把握など、企業側の配慮が求められます。

1-2. 残業免除を請求した従業員には残業を命じられない【2025年4月改正で対象拡大】

 従業員から所定外労働の制限(残業免除)の請求があった場合、会社は原則として所定外労働を免除する必要があります。残業免除の適用期間中は、原則として所定労働時間を超えて働かせることができません。

 2025年4月の法改正により、育児を理由とする残業免除の対象は「3歳未満の子を養育する労働者」から「小学校就学前の子を養育する労働者」まで拡大されました。短時間勤務制度の対象期間が終了したあとも、残業免除を利用できる場合があるため、企業は従業員ごとの適用状況を正確に管理する必要があります。なお、事業の正常な運営を妨げる場合は、会社が請求を拒めることがあります。拒否できるかどうかは、担当業務の内容や繁閑、代替要員の配置の難易度などを踏まえ、客観的に判断する必要があります。

参考:育児・介護休業法第16条の8

1-3. 36協定なしで1日8時間・週40時間を超えると違法になる

 時短勤務者であっても、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて働かせるには、36協定の締結・届出が必要です。36協定がない状態で法定労働時間を超えさせると、労働基準法違反として6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となります。

 また、36協定を締結していても、時間外労働には原則「月45時間・年360時間」の上限があります。時短勤務者だからといって上限規制の対象外になるわけではない点に注意しましょう。

2. 時短勤務は何時間から残業になる?

 時短勤務者は、会社が定めた所定労働時間を超えた時点から残業(所定外労働)になります。所定労働時間が6時間であれば、6時間を超えた分から残業として賃金の支払いが必要です。

 ただし、「残業=すべて25%の割増賃金が必要」ではありません。時短勤務者の残業は、所定労働時間と法定労働時間を基準に、法定内残業と法定外残業に分けて考えます。また、22時から翌5時まで働いた場合は、別途、深夜割増が加算されます。

区分 該当する時間(所定6時間の場合) 割増賃金
法定内残業 6時間超〜8時間まで 通常賃金。法律上の割増は原則不要
法定外残業 8時間超 25%以上の割増が必要
深夜労働 22時〜翌5時 法定内・法定外を問わず25%以上を加算

2-1. 時短勤務(短時間勤務制度)とは|所定労働時間は原則6時間

短時間勤務の制度例

 時短勤務とは、育児や介護と仕事を両立するために、通常よりも短い所定労働時間で働く制度です。育児の場合、事業主は3歳未満の子を養育する一定の要件を満たす従業員に対し、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む短時間勤務制度を設ける必要があります。

 一方、介護の場合は、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤、介護サービス費用の助成などから、会社が1つ以上の措置を設けます。そのため、すべての会社で介護の短時間勤務制度が設けられているとは限りません。要件を満たせば、パート・アルバイトなどの非正規雇用の従業員も対象になります。

2-2. 「所定外労働」「法定内残業」「法定外残業」の違い

 時短勤務者の残業を正しく管理するには、次の2つの労働時間の違いを押さえる必要があります。

所定労働時間:

 会社が就業規則や雇用契約で定めた労働時間(例:時短勤務者は6時間)

法定労働時間:

 労働基準法が定める上限(1日8時間・週40時間)

 所定労働時間を超えても法定労働時間内に収まる残業は「法定内残業」と呼ばれ、通常賃金の支払いで足ります。一方、法定労働時間を超えた残業は「法定外残業(時間外労働)」となり、労働基準法第37条に基づく25%以上の割増賃金が必要です。

 特に時短勤務者は、短縮後の所定労働時間と法定労働時間の間に差が生じやすいため、両者を混同すると残業代の計算ミスにつながります。

2-3. 【図解】1日6時間勤務の場合、どこから割増賃金が必要か

 所定労働時間が9:00〜16:00(休憩1時間・実働6時間)の従業員を例にすると、残業の区分は次のとおりです。

時間帯 区分 賃金
9:00〜16:00 所定労働時間 通常賃金
16:00〜18:00 法定内残業 通常賃金(割増なし)
18:00〜22:00 法定外残業 25%以上の割増
22:00〜翌5:00 法定外残業+深夜労働 50%以上の割増

 「16時を過ぎたら割増が必要」でも「18時までは残業代が不要」でもない点がポイントです。16時以降の労働にはすべて賃金の支払いが必要で、25%以上の時間外割増賃金が上乗せされるのは、18時を超えて実働8時間を超えた部分からです。

3. 時短勤務中の残業代はどう計算する?

 時短勤務者の残業代は、まず残業時間を法定内残業と法定外残業に分けます。そのうえで、22時から翌5時までの労働には深夜割増を加えて計算します。

区分 計算式
法定内残業 1時間あたりの賃金 × 残業時間
法定外残業 1時間あたりの賃金 × 1.25 × 残業時間
法定外残業と深夜労働が重なる時間 1時間あたりの賃金 × 1.5 × 残業時間

3-1. 6時間超〜8時間までは割増なしの通常賃金でよい

 所定労働時間の6時間を超えて8時間までの法定内残業には、法律上、割増賃金の支払い義務はありません。通常の1時間あたりの賃金で計算した残業代を支払えば足ります。

 ただし、割増が不要なだけで、賃金の支払い自体は必要です。「8時間までは残業代が発生しない」という誤解は未払いに直結するため注意しましょう。

3-2. 8時間超は25%以上、深夜労働はさらに25%の割増が必要

 原則として、1日8時間または週40時間を超えた法定外残業には、25%以上の割増賃金が必要です。さらに22時〜翌5時の深夜労働が重なった場合は、深夜割増25%が加算され、合計50%以上の割増率になります。

 なお、法定外残業が月60時間を超えた場合、超過分の割増率は50%以上に引き上げられます。時短勤務者で月60時間を超えるケースはまれですが、割増率の仕組みとして押さえておきましょう。

3-3. 【計算例】時給2,000円で23時まで残業した場合

 1時間あたりの賃金が2,000円、所定労働時間が10:00〜17:00(休憩1時間・実働6時間)の従業員が、23時まで残業したケースで計算します。

時間帯 区分 計算式 残業代
17:00〜19:00 法定内残業 2,000円 × 2時間 4,000円
19:00〜22:00 法定外残業 2,000円 × 1.25 × 3時間 7,500円
22:00〜23:00 法定外残業+深夜 2,000円 × 1.5 × 1時間 3,000円

 この日の残業代は、合計14,500円です。

 このように、時短勤務者の残業代は1日の中でも区分が切り替わるため、フルタイム勤務者と同じ設定のまま計算すると誤りが生じます。従業員ごとに所定労働時間を設定できる勤怠管理の仕組みが不可欠です。

4. 育児・介護中に利用できる3つの残業制限

 育児・介護休業法では、一定の要件を満たす従業員が会社に請求することで、残業を制限・免除できる制度が3つ定められています。時短勤務の有無にかかわらず利用できる制度のため、時短勤務を終えた従業員が残業制限だけを継続するケースもあります。

制度 制限内容 請求できる期間
所定外労働の制限 所定労働時間を超える残業を原則免除 1回につき1ヵ月以上1年以内
時間外労働の制限 法定時間外労働を月24時間・年150時間以内に制限 1回につき1ヵ月以上1年以内
深夜業の制限 22時〜翌5時の労働を原則免除 1回につき1ヵ月以上6ヵ月以内

4-1. 所定外労働の制限|所定時間を超える残業を原則免除

 所定外労働の制限(残業免除)が適用されると、会社は原則として、従業員を所定労働時間を超えて働かせることができません。所定労働時間が6時間の時短勤務者であれば、原則として6時間を超える残業が制限されます。1日8時間を超える法定外残業だけでなく、6時間〜8時間の法定内残業も制限の対象になる点が、次に説明する時間外労働の制限との大きな違いです。

 対象は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者と、要介護状態の家族を介護する労働者です。ただし、継続雇用1年未満の労働者や、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は、労使協定により対象外とできます。

4-2. 時間外労働の制限|月24時間・年150時間まで

 時間外労働の制限が適用されると、会社は原則として、従業員に月24時間・年150時間を超える法定時間外労働をさせることができません。

 ここでいう時間外労働は法定外残業を指すため、所定労働時間を超えても法定労働時間内に収まる法定内残業は、この制限の対象外です。時短勤務者が時間外労働の制限だけを請求している場合、6時間を超えて8時間までの法定内残業は、この制度による制限の対象外です。「所定外労働の制限」とは対象範囲が異なるため、どちらを請求されているか、勤怠管理上で区別しておきましょう。

4-3. 深夜業の制限|22時〜翌5時の労働免除

 深夜業の制限が適用されると、会社は原則として、従業員を22時から翌5時までの深夜時間帯に働かせることができません。所定労働時間後の残業が深夜帯にまで及ぶ場合も対象になるため、勤務時間の設定には注意が必要です。

 対象外となるのは、継続雇用期間が1年未満の労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者のほか、深夜に保育や介護を担える一定の要件を満たす同居家族がいる場合などです。

4-4. 対象者と申請方法

 3つの制限はいずれも、原則として利用開始予定日の1か月前までに会社へ請求します。会社所定の申請書やシステムなどを使用し、対象となる子・家族や利用希望期間などの必要事項を届け出ます。

 請求があった場合、会社は原則として制度を適用する必要があります。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、請求を拒めることがあります。拒否できるかどうかは、担当業務の内容や繁閑、代替要員の配置の難易度などを踏まえ、客観的に判断しましょう。

参考:育児休業制度 所定外労働の制限(残業免除)|厚生労働省

5. 時短勤務中の残業が違法・トラブルになるケース

 時短勤務中の残業は、次のようなケースで違法性が疑われたり、労使間のトラブルに発展したりします。企業として未然に防げているか、確認しておきましょう。

5-1. 残業免除の申請後も残業を命じている

 残業免除(所定外労働の制限)が適用されている従業員には、会社は原則として所定労働時間を超える残業を命じることができません。申請の存在を管理者が把握しておらず、現場の判断で残業を依頼してしまうケースは、典型的なトラブル原因です。

 従業員が自ら残っているように見える場合でも、会社が残業を把握・黙認している場合や、所定労働時間内に終えられない業務量を与えている場合は、実質的な指示による労働と判断される可能性があります。

5-2. 所定労働時間を超えた分の賃金を支払っていない

 「時短勤務者の残業は8時間を超えてから」という誤解により、6時間を超えて8時間までの法定内残業分の賃金が支払われていないケースがあります。

 割増賃金が不要なのは事実ですが、通常賃金の支払い義務は発生します。フルタイム勤務者と同じ基準で残業時間を計算していると、この未払いに気づきにくいため注意が必要です。

5-3. 持ち帰り残業の黙認や残業時間の切り捨てをしている

 時短勤務は勤務時間が短いぶん、業務が終わらず自宅への持ち帰り残業が発生しやすい働き方です。会社の明示または黙示の指示によって持ち帰り残業が行われている場合、その時間も労働時間として賃金の支払い対象になります。

  • 期限内に終わらない業務量を課している
  • 持ち帰り残業をしていることを把握しながら黙認している
  • 残業をしないと人事評価が下がる

 厚生労働省のガイドラインでも、使用者の明示または黙示の指示によって業務に従事した時間は労働時間に該当し、タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録をもとに確認することが原則とされています。上記のような状況は、黙示の指示があったと判断される要因になり得ます。

 また、日ごとの労働時間を15分や30分単位で一律に切り捨て、その時間分の賃金を支払わない運用は、労働基準法違反となります。時短勤務者に限らず、実際に働いた時間を正確に把握し、その時間に応じた賃金を支払いましょう。

参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省

6. 時短勤務者の残業管理で企業が対応すべきこと

 時短勤務者の残業トラブルを防ぐには、制度の周知と労働時間の正確な把握に加え、残業そのものが発生しにくい業務体制を整えることが欠かせません。

6-1. 就業規則に残業の取り扱いと申請フローを明記する

 時短勤務者への残業の考え方や、残業免除・制限の申請ルールは、就業規則にあらかじめ明記しておくことが重要です。具体的には、次の項目を整備しておくとよいでしょう。

  • 対象者の条件(育児・介護など)
  • 申請方法(書面・システムなど)と申請期限
  • 承認フロー(上司・人事の確認など)

 「短時間勤務申出書」や「残業免除申請書」のフォーマットを用意し、従業員が迷わず申請できるようにしましょう。また、制度の申請や利用を理由に、解雇、減給、降格などの不利益な取り扱いを行ってはいけません。

6-2. 業務量を見直し、勤怠管理システムで残業を正確に管理する

 制度を整えても、フルタイム勤務時と同じ業務量や納期を割り当てたままでは、持ち帰り残業やサービス残業の温床になります。時短勤務者を配置する際は、優先度の低い業務の削減や、定型業務の分担など、業務量そのものの見直しもあわせて検討しましょう。

 そのうえで実務上の負担になりやすいのが、従業員ごとに異なる所定労働時間を踏まえた、法定内残業と法定外残業の切り分けです。手作業での集計はミスが起きやすく、未払いや計算誤りの原因になります。

 勤怠管理システムを導入すれば、従業員ごとに所定労働時間を設定したうえで、打刻データから法定内・法定外・深夜労働を自動で区分し、残業アラートで長時間労働を未然に防ぐことができます。給与計算システムと連携させれば、複雑な割増計算も含めて処理を効率化できるため、時短勤務者が多い企業ほど導入効果を実感しやすいでしょう。

7. まとめ|時短勤務者の残業は所定時間と法定時間を分けて管理しよう

 時短勤務中の残業自体は、直ちに違法になるわけではありません。ただし、残業免除が適用されている従業員への残業命令、36協定を締結せずに行わせる法定時間外労働、36協定や法令上の上限を超える残業、所定労働時間を超えた分の賃金未払いは、法令違反となるおそれがあります。

 残業代を正しく計算するには、所定労働時間(例:6時間)と法定労働時間(8時間)という2つの基準を分けて管理することが欠かせません。従業員ごとに異なるこの基準を手作業で管理するのは負担が大きく、ミスも起こりやすいため、勤怠管理システムの活用が現実的な解決策になります。

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