「有給休暇がない中小企業」は違法?
年5日義務・罰則・対応策を解説

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#中小企業

2026年07月04日

 「中小企業だから有給休暇はなくてもいい」「パート・アルバイトには有給を与えなくてよい」と考えていませんか?

 結論から言うと、会社の規模にかかわらず、一定の条件を満たした従業員には有給休暇を付与する必要があります。2019年4月からは、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して「年5日以上取得させる義務」も始まっています。

 本記事では、有給休暇が発生する条件や付与日数、年5日取得義務のルール、罰則、人手不足の中小企業が行うべき管理方法をわかりやすく解説します。

1. 「有給休暇がない中小企業」は違法?

 結論からお伝えすると、一定の条件を満たした従業員に有給休暇を与えていない会社は、企業規模にかかわらず労働基準法違反となる可能性があります。

 有給休暇は労働基準法第39条で定められた労働者の権利であり、業種や従業員数、正社員かパート・アルバイトかを問わず、一定の条件を満たせば法律上当然に発生します。会社の裁量で「うちには有給休暇の制度がない」と決めることはできません。

 もし条件を満たしているにもかかわらず有給休暇を与えなかったり、労働者が請求した時季の取得を正当な理由なく拒んだりした場合、労働基準法違反として罰則の対象になる可能性があります。罰則の詳細は5章で解説します。

 従業員数が少ない、資本金が小さいといった中小企業の事情は、有給休暇を与えない理由にはなりません。つまり「中小企業だから有給がない」という状態そのものが、本来はあってはならないものなのです。

2. なぜ「中小企業には有給がない」と言われてしまうのか

 一定の条件を満たせば法律上発生するにもかかわらず、なぜ世間では「中小企業には有給がない」という声が聞かれるのでしょうか。主な理由は次の4つです。

「正社員だけの制度」という誤解

 経営者や現場管理者が「パート・アルバイトには有給は関係ない」「就業規則に書いていなければ付与しなくてよい」と誤って認識しているケースです。

人手不足による取得しづらい雰囲気

 少人数で業務を回している現場(建設業・製造業など)では、「自分が休むと現場が回らない」という心理的ハードルから、制度自体はあっても有給が後回しになりがちです。

社内ルールや発生日数の周知不足

 制度はあっても申請方法が従業員に周知されておらず、「そもそも自分が有給を何日持っているのか知らない」というケースです。

アナログな管理体制の限界

 紙の申請書やExcelで有給を管理している場合、従業員ごとの付与日数や残日数を正確に把握しきれず、未付与や管理漏れが起きていることがあります。

 「中小企業には有給がない」と言われる背景の多くは、法律上不要だからではなく、「制度理解の不足」「人手不足」「管理体制の不備」が原因です。次章では、有給休暇がそもそもどのような条件で発生するのかを確認しましょう。

3. 有給休暇が発生する2つの条件

 有給休暇は、すべての従業員に入社直後から必ず発生するわけではありません。以下の2つの条件を同時に満たした労働者に対して、会社の規模や業種を問わず自動的に発生します。

6か月間継続して勤務

 雇い入れの日(入社日)から6か月間継続して勤務していること

8割以上出勤

 その期間の全労働日の8割以上出勤していること

 この2条件を満たせば、労働者からの請求や会社の許可を待たず、法律上当然に有給休暇を受け取る権利(原則10日)が発生します。

 正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も対象であり、雇用形態を理由に有給休暇を与えないことはできません。週の所定労働日数が少ない従業員には、日数に応じた「比例付与」が適用されます。なお、派遣社員については、原則として雇用主である派遣元が有給休暇を付与・管理します。

 なお、出勤率の計算において、「育児休業」「産前産後休業」「労災による療養期間」「有給休暇を取得した日」などはすべて出勤したものとみなされるため、出勤率を下げる要因にはなりません(労働基準法第39条第10項)。

 次章では、勤続年数や所定労働日数に応じた有給休暇の付与日数を表で確認していきます。

4. 【表で解説】有給休暇の付与日数は何日?

 有給休暇の付与日数は、勤続年数や所定労働日数に応じて法律で決まっています(労働基準法第39条第2項・第3項)。

通常の労働者(週5日以上・週30時間以上勤務)の付与日数

勤続年数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

 一方、週の所定労働日数が4日以下かつ週30時間未満のパート・アルバイトには、労働日数に応じて日数を按分する「比例付与」が適用されます。

比例付与の日数(週所定労働日数別)

週所定労働日数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
週4日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
週3日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
週2日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
週1日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

 短時間勤務やシフト制のパート従業員が多い職場では、この比例付与の計算漏れが起きやすいポイントです。従業員ごとに「週の所定労働日数」と「勤続年数」を正しく把握し、日数を管理することが欠かせません。

 こうして付与された有給休暇のうち、年10日以上が付与される従業員には、会社側に「年5日取得させる義務」が課されています。次章で、この義務化ルールと罰則を詳しく見ていきましょう。

5. 中小企業も対象!年5日の取得義務と罰則

 2019年4月から、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、会社が年5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられました。

 従業員が自分で取得した日数や、計画年休で取得した日数も年5日に含められます。取得日数が5日に満たない場合は、会社が従業員の意見を聴いたうえで、取得時季を指定する必要があります。このルールは大企業・中小企業を問わず、正社員だけでなく、条件を満たすパート・アルバイトにも適用されます。

義務化の主なポイント

対象者:

 年10日以上の有給休暇が付与される労働者(比例付与でも年10日以上になるパート・アルバイトを含む)

期限:

 有給休暇の付与日(基準日)から1年以内に5日を取得させる必要がある

時季指定の方法:

 労働者本人の希望をできる限り尊重したうえで、会社側が取得日を指定する(すでに5日以上取得済みの労働者への時季指定は不要)

 会社にはさらに、労働者ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、取得時季・日数・基準日を記録する義務があります。保存期間は、有給休暇を与えた期間中およびその期間満了後3年間です(労働基準法施行規則第24条の7)。紙やExcelでの管理では、誰が何日取得済みかを把握しきれず、義務違反に気づかないまま期限を過ぎてしまうケースも少なくありません。

違反した場合の罰則

違反内容 根拠条文 罰則
年5日の取得義務を果たさなかった 労働基準法第39条第7項 30万円以下の罰金の対象となる可能性
労働者が請求した時季の取得を正当な理由なく拒んだ 労働基準法第39条第5項 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となる可能性

 違反が複数の労働者に及ぶ場合、人数に応じて問題が大きくなる可能性があります。なお、単に「人手不足だから」「繁忙期だから」という理由だけでは、取得を拒否する正当な理由として認められにくい点にも注意が必要です。

6. 人手不足の中小企業が今すぐやるべき有給管理の対応策

 法律上は理解していても、実際に人手が足りない中小企業では「どう5日を取得させればよいか分からない」という声も多く聞かれます。ここでは、今日から着手できる具体策を紹介します。

① 有休管理簿で現状を可視化する

 まずは従業員ごとの付与日数・取得日数・残日数を一覧化し、「誰が5日取得義務のボーダーラインに近いか」を把握します。現状が見えていない状態では対策の打ちようがありません。

② 計画的付与制度(計画年休)を導入する

 労使協定を結ぶことで、有給休暇のうち従業員が自由に取得できる5日分を除いた日数について、会社側が取得日をあらかじめ決められる制度です。夏季休暇や年末年始休暇の前後に有休を組み込む「ブリッジ休暇」方式は、建設業や製造業のように現場が繁忙期・閑散期で分かれる業種と相性がよく、従業員も気兼ねなく取得しやすくなります。

③ 業務の属人化を解消する

 特定の従業員しかできない業務があると、その人が休むこと自体が現場のリスクになります。業務マニュアルの整備や担当業務の共有を進め、「誰かが休んでも回る」体制を少しずつ作ることが、有休取得率の底上げにつながります。

④ 就業規則への明記と従業員への周知

 有給休暇の付与条件・取得方法を就業規則に明記し、入社時や年1回の説明会などで従業員に周知します。「取得しにくい雰囲気」の多くは、ルールが見えないことから生まれます。

⑤ 勤怠管理システムで取得状況を自動管理する

 従業員数が増えるほど、エクセルや紙台帳での管理には限界があります。勤怠管理システムを導入すれば、付与日数の自動計算、5日未達者のアラート表示、年次有給休暇管理簿の自動作成まで一元化でき、労務担当者の管理工数を大きく削減しながら、法令違反のリスクも抑えられます。

7. まとめ|中小企業でも有給休暇の適切な管理は必須

 有給休暇は、企業規模にかかわらず、一定の条件を満たした労働者に法律上発生する権利です。「中小企業だから有給がない」という状態は、原則として認められません。人手不足や管理体制の不備が「有給がない」という誤解を生んでいるケースが多く、まずは自社の付与状況を正しく把握することが第一歩です。

 特に、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対する「年5日取得義務」は、違反した場合に罰則の対象となる可能性がある重要なルールです。有休管理簿の整備や計画的付与制度の導入、そして勤怠管理システムによる自動管理を組み合わせることで、人手不足の中でも無理なく法令を遵守できる体制を整えていきましょう。