直行直帰とは?
移動時間は労働時間?勤怠管理と残業代を解説

#直行直帰

#勤怠管理

2026年07月30日

 直行直帰とは、会社に立ち寄らず、自宅から訪問先や作業現場へ直接向かい、業務終了後はそのまま帰宅する働き方です。移動の負担を減らせる一方で、「移動時間は労働時間になるのか」「始業・終業時刻をいつとするのか」など、勤怠管理で判断に迷うことがあります。

 結論からいうと、直行直帰の移動時間が労働時間に当たるかどうかは、会社の指揮命令下にあるかによって判断します。自由に移動している通勤時間は原則として労働時間に含まれませんが、会社の指示で社用車を運転したり、業務に必要な機材を運んだりする場合は、労働時間に該当する可能性があります。

 本記事では、直行直帰の移動時間や残業代・交通費の扱い、始業・終業時刻、就業規則と勤怠管理のポイントを解説します。

1. 直行直帰とは

 直行直帰とは、従業員が会社に出社せず、自宅から直接訪問先や現場へ向かい(直行)、業務終了後も会社に戻らずそのまま帰宅する(直帰)働き方です。

用語 意味
直行 自宅から会社へ出社せず、訪問先や現場へ直接向かうこと
直帰 訪問先や現場から会社へ戻らず、そのまま帰宅すること
直行直帰 会社へ出社・帰社せず、自宅と訪問先・現場を直接行き来すること

 直行・直帰のどちらか一方だけを認めるケースもあれば、1日を通して直行直帰とするケースもあります。

 会社への立ち寄りを省ける分、移動時間を有効に使える一方で、「どこまでが労働時間なのか」「移動時間の扱いはどうなるのか」が分かりにくく、勤怠管理の面では判断に迷いやすい運用でもあります。

 直行直帰が多く見られるのは、顧客訪問が中心の営業職、建設現場の施工管理、派遣スタッフ、ホームヘルパーや点検・保守スタッフなど、日によって働く場所が変わる業種・職種です。特に建設業や派遣スタッフの多い企業では、直行直帰が標準的な働き方になっているケースも少なくありません。

 こうした業種で労働時間を正確に管理するには、まず「移動時間が労働時間に含まれるかどうか」の判断基準を理解しておくことが欠かせません。

2. 直行直帰の移動時間は労働時間になる?判断基準と具体例

 直行直帰の移動時間が労働時間に含まれるかどうかは、就業規則などの定めではなく、客観的に見て「使用者の指揮命令下に置かれている時間」かどうかで判断されます。単にデスクで作業している時間だけでなく、会社からの指示があれば待機している時間や、指示に基づいて業務に従事している時間も労働時間に含まれます(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」参照)。

 この原則を踏まえると、直行直帰時の移動が労働時間に含まれるかどうかは、以下のように整理できます。

ケース 一般的な扱い 判断のポイント
自宅から最初の訪問先へ直接向かう 原則として含まれない 業務を行わず、移動時間を自由に利用できる場合
最後の訪問先から自宅へ帰る 原則として含まれない 業務終了後、自由に帰宅している場合
会社に集合して準備後、現場へ向かう 原則として含まれる 準備を始めた時点から会社の指揮命令下にある
訪問先から次の訪問先へ移動する 原則として含まれる 業務を継続するために必要な移動である
移動中に電話やメールへ対応する 対応した時間は含まれる 会社の指示や業務上の必要により対応している
会社の指示で資材の運搬や同僚の送迎を行う 含まれる可能性が高い 移動自体が業務の一部となり、自由が制限されている

 判断に迷いやすいのが、社用車の運転や機材の運搬です。会社から社用車の運転や、業務に必要な機材・資料の運搬を指示されている場合は、移動時間が労働時間に該当する可能性があります。一方、自宅から最初の訪問先まで、業務を行わず自由に移動している場合は、通常の通勤と同様に、原則として労働時間には含まれません。

 例えば、所定労働時間が9時から18時まで、休憩が1時間の会社で、会社の指示により8時30分からオンライン朝礼に参加し、18時30分まで業務を行った場合、実労働時間は9時間です。変形労働時間制やフレックスタイム制などを採用していない場合、法定労働時間である1日8時間を超える1時間については、原則として時間外割増賃金の支払いが必要です。また、法定時間外労働をさせるには、あらかじめ36協定を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。

 このように、直行直帰の移動時間は、一律に「労働時間に含める・含めない」と決められるものではありません。会社からの指示や移動中の業務、時間の自由度など、実態に応じて個別に判断する必要があります。

3. 直行直帰の始業・終業時刻はどう定める?就業規則の規定例

 直行直帰の場合、始業時刻は「最初の業務を開始した時刻」、終業時刻は「最後の業務を終えた時刻」とするのが基本的な考え方です。

 会社に出社するかどうかにかかわらず、実際に業務を開始・終了したタイミングが労働時間の起点・終点になる点は、通常の勤務と変わりません。ただし、直行直帰では「どこからが業務でどこまでが通勤なのか」が曖昧になりやすいため、あらかじめ就業規則や社内ルールで明確に定めておくことが重要です。

区分 始業・終業時刻の考え方
直行の場合 最初の訪問先や作業現場で、実際に業務を開始した時刻。ただし、それ以前に会社の指示による準備・連絡・待機などを行った場合は、その開始時刻
直帰の場合 最後の訪問先や作業現場での業務を終えた時刻。ただし、その後に日報作成・終了報告・資材返却などを求められている場合は、それらを終えた時刻

就業規則の規定例

従業員が直行直帰を行う場合、始業時刻は最初の訪問先または作業場所で実際に業務を開始した時刻とする。ただし、それ以前に会社の指示による業務、準備または待機を行った場合は、その開始時刻とする。終業時刻は、最後の訪問先または作業場所での業務および会社が指示した報告、片付けその他の業務を終了した時刻とする。

また、従業員は、会社所定の方法により、実際の始業・終業時刻および休憩時間を正確に記録するものとする。

 自宅から最初の訪問先まで、または最後の訪問先から自宅までの移動時間は、会社の指示や移動中の業務の有無、時間を自由に利用できるかなど、実態に応じて個別に判断する必要があります。就業規則で一律に労働時間から除外するのではなく、自社の業務内容に合った判断基準を定めることが重要です。

4. 事業場外みなし労働時間制は使える?適用条件と注意点

 結論として、直行直帰を行っているというだけで、自動的に事業場外みなし労働時間制を適用できるわけではありません。

 事業場外みなし労働時間制とは、労働基準法第38条の2に基づき、事業場外で業務に従事し、かつ労働時間の算定が困難な場合に、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度です。適用するには、次の2つの要件をいずれも満たす必要があります。

  • 事業場外で業務に従事していること
  • 実際の労働時間を算定することが難しいこと

 適用できるかどうかは、業務内容や会社からの指示、報告方法、従業員の裁量などを踏まえて個別に判断されます。スマートフォンやGPS、日報を利用しているだけで直ちに適用できなくなるわけではありませんが、それらの記録から実際の労働時間を把握できる場合は、認められない可能性があります。

 また、制度を導入していても、残業代が一切発生しないわけではありません。みなし労働時間が原則として1日8時間・週40時間を超える場合や、深夜労働・法定休日労働が発生した場合は、割増賃金の支払いが必要です。直行直帰であることだけを理由に安易に適用せず、自社の勤務実態を踏まえて慎重に判断しましょう。

5. 直行直帰を導入するメリット・デメリット

 直行直帰には、移動時間の削減や業務効率の向上といったメリットがある一方、労働時間や勤務状況を把握しにくくなるデメリットもあります。導入する際は、企業側と従業員側の両方の視点から特徴を理解しておきましょう。

直行直帰のメリット

メリット 内容
移動時間を削減できる 会社への出社・帰社が不要になり、余分な移動を減らせる
業務効率の向上が期待できる 訪問や現場作業に使える時間が増え、予定を効率的に組みやすくなる
従業員の負担を軽減できる 移動や通勤ラッシュによる負担を減らし、働きやすさの向上につながる
交通費を抑えられる場合がある 会社を経由する必要がなくなり、移動にかかる費用を削減できることがある

 例えば、自宅から訪問先が近いにもかかわらず、一度会社へ出社してから移動すると、余分な時間や交通費が発生します。直行直帰を認めることで、営業職は訪問件数を増やしやすくなり、現場担当者は作業時間を確保しやすくなります。

直行直帰のデメリット

デメリット 内容
労働時間を把握しにくい 始業・終業時刻、移動時間、待機時間などが見えにくくなる
勤務状況を確認しにくい 管理者が訪問先や業務内容、進捗を直接確認できない
労務トラブルにつながる可能性がある 移動時間の扱いが曖昧な場合、未払い残業などが発生するおそれがある
コミュニケーションが不足しやすい 上司や同僚と顔を合わせる機会が減り、情報共有が遅れることがある

 直行直帰のデメリットの多くは、勤怠記録や業務報告のルールが整っていないことから生じます。メリットを生かすには、出社・帰社を省略するだけでなく、始業・終業時刻の記録方法や申請・承認の流れもあわせて整備することが重要です。

6. 直行直帰で起こりやすい勤怠管理のNG例と改善方法

 直行直帰では、従業員が会社の外で始業・終業するため、通常の勤務よりも労働時間の実態が見えにくくなります。誤った運用を続けると、勤怠記録と実際の労働時間にずれが生じ、未払い残業などの問題につながる可能性があります。

NG例1:労働時間を自己申告だけに任せている

 自己申告制による勤怠管理そのものが、直ちに問題になるわけではありません。しかし、申告内容を確認せず、そのまま勤怠記録として処理すると、申告漏れや記憶違いに気づきにくくなります。例えば、早朝のオンライン朝礼、訪問後の日報作成、時間外の電話対応などが記録されず、実際の労働時間より短く申告される可能性があります。

改善方法

 スマートフォンからの打刻、パソコンの使用履歴、日報、訪問予定などと自己申告の内容を照合しましょう。記録に大きなずれがある場合は、勤務実態を確認し、必要に応じて労働時間を修正します。

NG例2:始業・終業時刻の基準が曖昧

 「訪問先へ到着した時刻を始業とするのか」「訪問前の連絡を始めた時刻を始業とするのか」などの基準が決まっていないと、従業員や管理者によって判断が分かれてしまいます。終業時刻についても、訪問先を出た時刻とするのか、日報や終了報告を終えた時刻とするのかを明確にする必要があります。

改善方法

 就業規則や社内ルールに、始業・終業時刻の判断基準を明記します。オンライン朝礼、事前準備、待機、日報作成など、判断に迷いやすい時間の扱いも具体的に定め、従業員へ周知しましょう。

NG例3:移動時間を一律に労働時間から除外している

 直行直帰の移動時間は、すべて通勤時間になるわけではありません。自宅から最初の訪問先まで自由に移動する時間は、原則として労働時間に含まれません。一方、会社から指示された資材の運搬、同僚の送迎、訪問先から次の訪問先への移動などは、労働時間に該当する可能性があります。

改善方法

 次のような判断基準を社内で統一しましょう。会社から具体的な業務指示を受けているか、移動自体が業務の一部になっているか、移動中の時間を自由に使えるか、資材や機材の運搬・管理を求められているか、訪問先間を業務上移動しているか。移動時間を一律に扱わず、実際の業務内容や拘束の程度を踏まえて判断することが重要です。

NG例4:申請・承認の履歴を残していない

 従業員が自由に直行直帰を行い、会社が対象者や訪問先を把握していない状態では、勤務実態を確認することが難しくなります。予定と実際の勤務時間が異なっていても、申請や修正の履歴がなければ、管理者が差異に気づけない可能性があります。

改善方法

 直行直帰を行う日、訪問先、予定時刻などを事前に申請し、上司が承認する運用を整えます。予定から勤務内容が変わった場合は、従業員が修正申請を行い、管理者が確認できる仕組みにしましょう。

 直行直帰でも、企業には従業員の労働時間を適正に把握する責任があります。スマートフォン打刻や申請・承認機能を活用し、実際の勤務状況を確認できる記録を残すことが重要です。

7. 直行直帰に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 直行だけ、または直帰だけでも利用できますか?

 直行と直帰は、必ずセットで行う必要はありません。自宅から訪問先へ直接向かい、業務終了後に会社へ戻る「直行のみ」や、会社から訪問先へ向かい、そのまま帰宅する「直帰のみ」の運用も可能です。ただし、従業員が自由に判断するのではなく、会社が定めた申請・承認ルールに従って利用する必要があります。

Q2. 直行直帰の日に定時前に業務が終わったら早退になりますか?

 従業員が自分の判断で所定終業時刻より前に業務を終えた場合は、就業規則や雇用契約の定めにより、早退として扱われる可能性があります。一方、会社の指示によって業務を終了した場合は、必ずしも従業員都合の早退になるとは限りません。フレックスタイム制などの勤務制度も含め、所定終業時刻より早く業務が終わった場合の扱いを、就業規則や社内ルールで明確にしておきましょう。

Q3. 直行直帰でも残業代は発生しますか?

 直行直帰でも、労働時間に該当する時間については賃金の支払いが必要です。所定労働時間を超えた時間は、就業規則や賃金規程に基づく賃金の支払い対象となります。さらに、変形労働時間制などの例外を除き、労働時間が1日8時間・週40時間を超えた場合は、法定時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。直行直帰であることを理由に、残業代が発生しなくなるわけではありません。

Q4. 直行直帰の場合、交通費や通勤手当はどうなりますか?

 交通費や通勤手当の扱いは、会社の就業規則、賃金規程、旅費規程などによって異なります。例えば、自宅から最初の訪問先までと、最後の訪問先から自宅までの費用を通勤交通費として扱い、訪問先から次の訪問先までの移動費を業務上の交通費として精算する方法があります。定期券の区間外やマイカーを利用した場合の精算方法も含め、会社が負担する範囲をあらかじめ明確にしておくことが重要です。

Q5. 直行直帰中の事故は労災になりますか?

 自宅から最初の訪問先まで、または最後の訪問先から自宅までの合理的な経路・方法による移動中の事故は、通勤災害に該当する可能性があります。一方、訪問先から次の訪問先への移動など、業務上必要な移動中の事故は、業務災害として扱われる可能性があります。ただし、私的な目的で合理的な経路を大きく外れたり、移動を中断したりした場合は、通勤災害として認められないことがあります。最終的には、個別の状況を踏まえて判断されます。

Q6. 会社は直行直帰を禁止できますか?

 直行直帰は、従業員が当然に自由利用できる制度ではありません。会社は、業務上の必要性、勤怠管理、安全管理、情報管理などを踏まえて、利用できる対象者や条件を定められます。会社が出社や帰社を指示している場合は、原則としてその指示に従う必要があります。直行直帰を認める場合は、対象者、利用条件、申請・承認方法などを社内ルールで明確にしておきましょう。

8. まとめ|直行直帰はルールの明文化と客観的な記録が重要

 直行直帰は、出社や帰社に伴う移動を減らし、業務効率や従業員の働きやすさを高められる働き方です。一方、始業・終業時刻や移動時間の扱いが曖昧なままでは、勤務実態を正確に把握できず、未払い残業などの問題につながる可能性があります。

 企業は、直行直帰の対象者や申請方法、始業・終業時刻、移動・待機・報告時間の扱いを就業規則や社内ルールに明記しましょう。そのうえで、スマートフォンからの打刻や申請・承認履歴など、客観的に確認できる記録を残すことが重要です。

 FC勤怠では、GPS位置情報を記録できるスマートフォン打刻、直行直帰の申請・承認、残業時間の集計などに対応できます。直行直帰を含む勤怠管理に課題をお持ちの場合や、自社の勤務ルールに合わせて運用できるか確認したい場合は、お気軽にお問い合わせください。