振替休日に割増賃金は発生する?
週またぎ・法定休日・代休との違いを解説

#振替休日

#割増賃金

2026年06月18日

 振替休日を取得させれば、休日出勤の割増賃金は不要だと思っていませんか。

 たしかに、事前に休日と労働日を入れ替えている場合、休日労働に対する35%以上の割増賃金は原則として発生しません。しかし、週をまたいで振り替えた結果、1週間の労働時間が40時間を超える場合は、超過分に25%以上の時間外割増賃金が必要になります。また、休日出勤後に休みを与える「代休」とは、割増賃金の扱いが異なります。

 本記事では、振替休日と割増賃金の関係をケース別にわかりやすく解説します。

1.【結論】振替休日に割増賃金は発生する?

 振替休日を取得させれば、割増賃金は一切不要——この認識は、半分正解で半分誤りです。

原則:事前に振り替えた場合、休日労働の割増賃金は不要

 振替休日とは、就業規則の規定にもとづき、あらかじめ休日と労働日を入れ替える制度です。正しい手続きで振り替えた場合、もともとの休日は「労働日」として扱われるため、休日労働には該当しません。そのため、法定休日労働に対する35%以上の割増賃金は、原則として発生しません。

例外:週40時間を超えると時間外割増賃金が発生する

 ただし、振替休日を別の週に設定した場合は注意が必要です。振り替え元の週で労働時間が増え、1週間の労働時間が法定労働時間である40時間を超える場合、超過分については25%以上の時間外割増賃金が必要になります。

ケース 休日割増 時間外割増
同一週内に振替休日を取得 原則不要 週40時間超の場合のみ必要
週をまたいで振替休日を取得 原則不要 週40時間超の場合は必要
代休(事後に休みを付与) 休日労働分の割増賃金が必要 週40時間超の場合は必要

 ※休日割増は法定休日労働に該当する場合35%以上、時間外割増は週40時間を超える場合25%以上です。

2. 振替休日とは?代休との違いをおさらい

振替休日とは

 振替休日とは、就業規則にもとづき、あらかじめ「休日」と「労働日」を入れ替える制度です。たとえば「日曜日を出勤日とする代わりに、翌週水曜日を休日にする」と事前に決めた場合、日曜日はもはや休日ではなく通常の労働日として扱われます。

 振替休日が成立するためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 就業規則に振替休日の規定があること(労働条件の一方的な変更を避けるため)
  • 振り替える日を事前に特定し、あらかじめ労働者へ通知すること
  • 振り替えた後も、1週1日または4週4日の法定休日が確保されていること

代休との違い

 代休は、休日に出勤させた「後」に、別の日を休みとして付与する制度です。振替休日と似ていますが、決定的な違いは「事前か事後か」という点にあります。

 代休の場合、休日出勤した事実そのものは消えません。そのため、休日労働に対する割増賃金(法定休日なら35%以上)の支払いは必要です。代休を取得させたとしても、割増分を差し引くことはできません。

振替休日 代休
決定タイミング 出勤前に決める 出勤後に決める
休日労働の扱い 休日労働に該当しない 休日労働に該当する
休日割増賃金 原則不要 必要。法定休日は35%以上、所定休日は週40時間超の場合に25%以上
休みを取得した日の賃金 通常の休日として扱う 通常賃金分を控除できる。割増分は控除不可

 「ウチは振休を使っているから割増は払っていない」という企業でも、実態が代休の運用になっていることがあります。事後に休みを決めている場合は代休に該当するため、割増賃金の未払いリスクに注意が必要です。

参考:振休(振替休日)と代休の違いとは?給与への影響を解説!

3. 振替休日で割増賃金が不要になるケース

 振替休日の割増賃金が原則として不要になるのは、次の条件がそろった場合です。

① 就業規則に振替休日の規定があり、事前に振替日が特定されている

 振り替える日を「出勤前」に決め、労働者に通知していることが前提です。「出勤してからあとで休みの日を決める」は振替休日ではなく代休の扱いになります。

② 振り替えた週の総労働時間が週40時間以内に収まっている

 振り替え元の週で週40時間以内に収まっていれば、時間外割増賃金は発生せず、割増賃金なしで運用できます。同一週内で振り替えた場合は、この条件を満たしやすくなります。

③ 法定休日が週1日(または4週4日)確保されている

 振り替えた後も、1週間に1日以上の法定休日が確保されていることが必要です。この要件を満たしていない場合、適切な振替休日として扱われず、休日労働として割増賃金の支払いが必要になる可能性があります。

 これら3つの条件がすべてそろって初めて、休日労働の割増賃金(35%以上)を支払わずに適法に運用できます。1つでも欠けると、割増賃金が必要なケースに変わるため、次章で確認してください。

4. 振替休日でも割増賃金が発生するケース

 振替休日を付与していても、次の3つのケースでは割増賃金の支払いが必要になります。運用上の見落としが多い箇所なので、それぞれ確認してください。

4-1. 週40時間を超える場合

 振替休日を翌週以降に設定した場合、振り替え元の週の労働時間が法定労働時間(週40時間)を超えることがあります。この超過分には、休日割増(35%)ではなく、時間外割増賃金(25%以上)の支払いが必要です。

 たとえば月〜金に8時間ずつ働き(計40時間)、さらに同じ週の土曜日に8時間出勤した場合、その週の労働時間は48時間になります。翌週に振替休日を取得しても、振り替え元の週で40時間を超えた8時間分については、時間外割増賃金を支払う必要があります。

 この点は「振替休日さえ取らせれば問題ない」と思っている企業が最も見落としやすいポイントです。振り替え元の週の総労働時間を必ず確認してください。

4-2. 法定休日を正しく振り替えられていない場合

 法定休日(就業規則で法定休日と定めた曜日)を振り替える場合は、振り替えた後も1週1日(または4週4日)の法定休日が確保されていることが必要です。

 この要件を満たさずに法定休日に出勤させた場合、振替休日として適切に扱われず、休日労働として35%以上の割増賃金の支払いが必要になることがあります。たとえば、法定休日に出勤させたにもかかわらず、代わりの休日を事前に特定していない場合や、振替後も1週1日または4週4日の休日が確保されていない場合は、適切な振替休日として扱われない可能性があります。就業規則の法定休日の設定と照らし合わせて確認しましょう。

4-3. 振替休日を事後に決めた場合

 振替休日は、出勤前に振り替える日を特定していることが成立要件です。「出勤させてから後日休みの日を決める」という運用は、法的には振替休日ではなく代休の扱いになります。

 代休の場合、休日出勤した事実は消えないため、法定休日に出勤していれば35%以上の休日割増賃金が必要です。「振休と呼んでいるが、実態は出勤後に日程調整している」というケースは実務上よく見られます。この場合、割増賃金未払いのリスクに直結するため、必ず事前に振替日を特定・通知する運用に改める必要があります。

5. 法定休日・所定休日で割増率はどう変わる?

 割増賃金の計算で重要なのは、出勤した休日が「法定休日」か「所定休日」かの区別です。

 法定休日とは、労働基準法が定める最低限の休日で、1週に1日(または4週に4日)確保が義務づけられています。就業規則で「日曜日を法定休日とする」などと定めるのが一般的です。

 所定休日とは、法定休日を上回る部分の休日です。週休2日制の会社であれば、土曜日が所定休日にあたることが多いです。

出勤した休日の種類 割増率 根拠
法定休日 35%以上 労働基準法第37条第1項
所定休日(週40時間超の場合) 25%以上 時間外労働として計算
所定休日(週40時間以内の場合) 原則不要 法定時間外労働に該当しない

参考:労働基準法第37条第1項|e-Gov法令検索

 事前に適切な振替が行われておらず、法定休日労働に該当する場合は、週の労働時間に関わらず35%以上の割増賃金が必要です。一方、所定休日の出勤は、その週の労働時間が40時間を超えた場合にのみ、超過分について25%以上の時間外割増賃金が発生します。

 ※深夜時間帯(22時〜翌5時)に労働した場合は、深夜割増25%が別途加算されます。法定休日の深夜労働であれば、35%+25%=60%以上の割増賃金が必要になります。

参考:法定休日と法定外休日の違いとは?割増賃金率・出勤時の扱いまで徹底解説!

6. 振替休日の割増賃金の計算例

 ここでは、週またぎの振替休日が発生した場合の計算例を示します。

【前提条件】

  • 所定労働時間:1日8時間、週休2日(土日)
  • 法定休日:日曜日
  • 基本賃金:時給2,000円
  • 土曜日に8時間出勤し、翌週水曜日に振替休日を取得

労働日 実労働時間
1週目 月〜金(各8時間)+土曜日(8時間) 48時間
2週目 月・火・木・金(各8時間)、水(振替休日) 32時間

1週目の計算

 事前に振替日(翌週水曜日)を特定しているため、土曜日の出勤は休日労働には該当せず、休日割増は原則不要です。ただし、1週目の労働時間が48時間となり、週40時間を超えた8時間分については時間外割増賃金が必要です。

2,000円 × 1.25 × 8時間 = 20,000円

 ※通常の1倍分(2,000円×8時間=16,000円)が月給に含まれる場合、追加で支給する割増分は、2,000円 × 0.25 × 8時間 = 4,000円です。

2週目の計算

 振替休日(水曜日)を取得しているため、2週目は32時間の労働にとどまります。週40時間以内なので、時間外割増賃金は発生しません。

振替休日を翌週に設定した場合でも、振り替え元の週で週40時間を超えた分の時間外割増賃金は発生します。「振替休日を取得させたから支払いゼロ」にはなりません。週またぎの振替が多い職場では、毎週の総労働時間管理が重要です。

7. 振替休日を適正に運用するための注意点

 振替休日は、単に「休日出勤の代わりに別の日を休ませる」だけでは適正に運用できません。割増賃金の未払いを防ぐためには、次の3点を確認しておくことが重要です。

7-1. 出勤前に振替日を決めておく

 振替休日として扱うには、休日出勤の前に、どの休日とどの労働日を入れ替えるのかを決めておく必要があります。出勤後に「代わりに別の日を休みにする」と決めた場合は、振替休日ではなく代休として扱われます。代休の場合、休日労働の事実は消えないため、法定休日に出勤していれば35%以上の休日割増賃金が必要です。

7-2. 週40時間を超えていないか確認する

 振替休日を取得させても、振り替え元の週で労働時間が40時間を超える場合は、超過分に25%以上の時間外割増賃金が必要です。特に、休日を翌週以降に振り替える場合は注意が必要です。翌週に休ませたとしても、出勤した週の週40時間超過分がなくなるわけではありません。

7-3. 法定休日・所定休日を区別して管理する

 割増率を正しく判断するには、出勤した日が法定休日なのか、所定休日なのかを区別する必要があります。法定休日に労働した場合は35%以上、所定休日の労働で週40時間を超える場合は25%以上の割増賃金が必要です。就業規則や勤務カレンダーで、法定休日・所定休日の扱いを明確にしておきましょう。

 なお、振替休日を運用するには、就業規則に休日を振り替える旨の規定を設けておく必要があります。あわせて、申請・承認の記録を残しておくと、振替休日と代休の混同を防ぎやすくなります。

8. まとめ|振替休日は「事前の振替」と「週40時間超」の確認が重要

 振替休日は、休日と労働日を事前に入れ替える制度です。正しく運用すれば、休日労働に対する35%以上の割増賃金は原則として発生しません。

 ただし、週をまたいで振り替えた結果、1週間の労働時間が40時間を超える場合は、超過分に25%以上の時間外割増賃金が必要です。また、休日出勤後に休みを与える「代休」は、休日労働の事実が残るため、振替休日とは割増賃金の扱いが異なります。

 振替休日は、単に「別の日に休ませればよい」という制度ではありません。事前の振替、週40時間の確認、休日区分の管理を正しく行い、割増賃金の未払いを防ぐことが重要です。

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