時間単位の年次有給休暇とは?導入方法やメリットを解説
有給休暇といえば1日単位で取得するのが一般的ですが、実は「時間単位」で取得できる制度があることをご存知でしょうか? 労使協定を結ぶことで、年5日を上限に時間単位で有給休暇を取得できる仕組みが認められています。
本記事では、時間単位年休の制度概要や導入方法、管理のポイントを解説します。メリット・デメリットを理解し、適切な運用でワークライフバランスの向上につなげましょう。
1. 時間単位の年次有給休暇とは
時間単位年休とは、1時間単位で取得できる年次有給休暇のことです。従来は、1日または半日単位で取得するのが一般的でしたが、2010年(平成22年)の労働基準法改正により、年5日分を上限として時間単位での取得が認められるようになりました。
例えば、「朝2時間だけ役所に寄ってから出勤したい」といった場合、その2時間分を有給休暇として取得することが可能になります。付与される年次有給休暇が10日ある場合、そのうち最大5日分(40時間など)を時間単位で利用できます。
時間単位年休の導入には、就業規則への明記や労使協定の締結が必要となるため、事前に制度の詳細を確認しておきましょう。
2. 時間単位年休を導入するメリット
ここまでで、時間単位年休の制度やその上限見直しについて触れてきましたが、次に時間単位年休を導入するメリットについて詳しく見ていきましょう。時間単位年休には、主に4つの大きなメリットがあります。
2.1 銀行の手続きや通院など突発的な所用を済ませられる
朝に銀行や役所に寄ってから出勤する際、半休を取ることが多いですが、実際には2時間だけ休みたいのに3〜4時間も休むことになり、無駄に感じることがあります。しかし、時間単位年休を利用すれば、実際にかかった2時間だけを年次有給休暇として取得できます。
また、持病があり定期的に通院が必要な従業員にとっても、時間単位年休は非常に便利です。これまで通院のために半休や1日単位の有給を取る必要がありましたが、時間単位年休があれば、遅く出社したり早めに退社したりして、無理なく通院できるようになります。これにより、従業員の健康管理やメンタルケアにも役立ちます。
2.2 育児や介護のサポートにつながる
子育て中の夫婦や介護が必要な親を持つ従業員にとって、時間単位年休は、仕事と生活のバランスを保つために大きな助けになります。
例えば、子どもが大きくなり時短勤務ができなくなった場合、夫婦で時間単位年休を活用することで、子育ての負担を軽減しやすくなります。また、時短勤務では給料が減ることがありますが、時間単位年休は有給休暇なので給料が減る心配はありません。
介護のために頻繁に半休や年休を取っていた場合、時間単位年休を利用すれば、周囲の目を気にせず、心理的にも負担が少なく休みを取ることができるようになります。
2.3 有給休暇の消化率が上がる
厚生労働省の調査によると、2023年の労働者1人あたりの平均有給消化率は65.3%という結果でした。これは世界的に見ても低い水準であり、日本では多くの人が有給休暇を取ることに罪悪感を感じ、休みたくても休むことができないという企業文化が依然として多く存在していることが分かります。
しかし、通常の有給休暇を取ることに抵抗を感じる人が多くても、時間単位であればその抵抗感を減らし、気軽に休むことができるようになります。例えば、「午前中の3時間だけ」や「就業前の2時間だけ」といった具合に、柔軟に休暇を取ることができるため、有給休暇の取得率向上に繋がることが期待できます。
2.4 企業の社会的価値が高まる
企業が時間単位の有給休暇を導入すると、労働者や社会に対して良い印象を与えることができます。「柔軟な働き方を推進し、ワークライフバランスの向上に取り組んでいる企業」としてのイメージが強まり、採用活動において応募者が増える可能性があり、社会的な評価も向上します。
人手不足に悩む企業や、ブランドイメージを向上させたい企業にとって、時間単位年休の導入は効果的な解決策となるかもしれません。
3. 時間単位年休を導入するデメリット
時間単位年休を導入すると、有給休暇の管理が複雑になるという課題があります。これまで日数単位で管理していたものを時間単位でも管理する必要があり、労務担当者の負担が増えたり、従業員自身が残りの有給時間を把握しにくくなったりする可能性があります。
この問題を解決するには、時間単位年休に対応した勤怠管理システムの導入が効果的です。システムを活用すれば、従業員の残りの有給時間をリアルタイムで把握でき、休暇申請や管理の手間を大幅に軽減できます。スムーズに時間単位年休を運用するためには、適切な管理システムを併せて導入することをおすすめします。
4. 時間単位年休を導入する方法
時間単位年休を導入するには、就業規則への明記と労使協定の締結 が必要です。
4.1. 就業規則に規定する
就業規則とは、労働条件や職場のルールを定めたものです。時間単位年休を導入する場合、以下の内容を明記するとトラブルを防げます。
(例)年次有給休暇の時間単位での付与に関する就業規則の規定
第〇条 会社は、労働者代表との書面による協定に基づき、年次有給休暇のうち、1年間につき5日分の範囲で「時間単位」で取得できるようにする。この休暇を「時間単位年休」という。
1.対象者
時間単位年休を取得できるのは、すべての従業員とする。
2.時間換算
1日分の年次有給休暇に相当する時間数は、所定労働時間に応じて次のとおりとする。
- 所定労働時間が5時間を超え6時間以下の場合 ー 6時間
- 所定労働時間が6時間を超え7時間以下の場合 ー 7時間
- 所定労働時間が7時間を超え8時間以下の場合 ー 8時間
3.取得単位
時間単位年休は「1時間単位」で取得できる。
4.賃金の計算方法
時間単位年休の賃金は、通常の1時間あたりの賃金額に、取得した時間数を掛けた額とする。
5.その他の取扱い
上記以外の取り扱いについては、通常の年次有給休暇と同じとする。
4.2. 労使協定の締結
時間単位年休を導入するには、 労働者の過半数を代表する者もしくは労働組合と書面による労使協定を締結する必要があります(※労働基準監督署への届出は不要)。
協定には、以下の内容を定めます。
- 対象となる労働者の範囲
- 時間単位年休を取得できる日数(1年最大5日以内)
- 時間帯年休1日分の時間数(端数は切り上げ)
- 1時間単位の時間を単位として与える場合の時間数(2時間など)
手続きをスムーズに進めるため、厚生労働省のモデル就業規則を参考にするとよいでしょう。
5. 時間単位年休の導入で、柔軟な働き方を実現!
時間単位の有給休暇は、1時間単位で柔軟に休みを取れる制度です。上手に活用することで、有給休暇の取得率向上や企業イメージの向上、ワークライフバランスの実現など、さまざまな効果が期待できます。
一方で、時間単位での管理は複雑になりやすく、労働時間管理の複雑化を招く可能性もあります。そのため、勤怠管理の仕組みを整え、1日単位・半日単位の休暇と併用しながら運用することが重要です。
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